20: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:36:54.11 ID:cgXM4cARO
一滴程度のビールすら受け付けなかったあの頃を思い出す。生涯分かり合えることがないだろうと思っていた苦い水が美味しいと思えるようになったのはいつの頃だったか。
多分スーツを着て慣れないネクタイを結んで社会人と呼ばれるようになったあたりだと思う。
「私も美味しく飲めるでしょうか?」
「さぁ、どうだろうね」
なんとなくだけど、目の前の彼女は弱そうだ。いっぱい飲むだけでへべれけになって周りに甘えるか眠ってしまいそう。
「私が20歳になったら、一緒に飲んでくれますか?」
「そうだな……その時まで、ちゃんとプロデュースしないとね」
ゆかりは小指を捧げる。意図を理解した俺は小指を彼女のそれな絡める。指切りげんまんなんて歳じゃないけども、いつかの未来に叶えたいちょっとした約束ができることは悪くない。
「嘘ついたら……有香ちゃんの正拳突きを食らわせます」
「友達をハリセンボンみたいに扱わないの」
「あはは……仲がよろしいようで……お邪魔でしたか? お邪魔ですよね」
村松さんは所在なげにウィンナーコーヒーを飲んでいる。完全に彼の存在を忘れて2人の世界になってしまっていた俺たちは途端に恥ずかしくなってビールをもう一杯頼むのだった。
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