水本ゆかり「維納に奏でる」
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2: ◆XUWJiU1Fxs
2019/04/25(木) 00:08:06.60 ID:cgXM4cARO
 10時間以上にも及ぶ空の旅はハプニングもなく快適なものだった。とはいえ、機内放送にも飽きてきた頃にはその快適さが退屈へと変わってしまい
隣で安心したように寝息を立てている彼女の寝顔を見つめることしかできなかった。窓の外を見ても空島も天空の城もドラゴンもなくどこまでも広がる空。
子供の頃ならばテンションが上がっていたのだろうけど、四捨五入すれば30歳になる身からすれば感性が鈍ってしまったのかなにも思う事はなくなっていた。

 それでも。これから降り立つ街への憧憬はあの頃のままで、仕事ということを忘れてしまいそうになるほどにウキウキとしていた。まるで
修学旅行前夜のように、なかなか眠れなくてインストールしてすぐにやめたゲームをやり直していくうちに朝になっていたくらいだ。

 隣の彼女も同じだろう。こちらに身体を寄せるようにアイマスクをして眠り続ける彼女も聞けば柄にもなく夜更かしをしてしまったらしい。
その気持ちはよくわかる。彼女にとっても、そしてかつての俺にとっても。これから降り立つ音楽の都は特別なものだったから。


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