36: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/04/27(土) 02:42:12.51 ID:HvshuUb/0
……ポーンと弾けたようだった。
ずっと、そう、彼女はずっと……抵抗が緩む頃合いを待っていたのだろう。
「あったかくて、心地よくて、まるで桃子ちゃんが持ってる優しさを、丸ごと抱きしめてるようにも思えちゃいます」
美也の良く通る声が私達の耳へ届けられ、
名前を呼ばれた本人が萎縮したように動きを止める。
が、しかし、その声には怒りも悲しみも感じられない。
何より彼女は非常にゆっくりと、そしてハッキリと――私と会話をしたパーティ会場でもそうであったように――
腕の中の少女に話しかけながら片手を彼女の髪に添えて、
その手つきは繊細な細工の施された美術品を扱うように至極丁寧で、
もっと違った例えを用意すれば、
まるで母親が子供を寝かしつける時に見せるような、
そんな温かみを感じる触り方で桃子の緊張をみるみる解いて行く。
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