荒木比奈「貴方が居る、其れだけで浮かぶ」
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6: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2019/04/09(火) 00:36:49.83 ID:Tnjuxph+0
比奈の部屋に入ったとき、真っ先に「荒れてる」と思った。汚くはないが綺麗でもない。床にはマンガの単行本やライトノベル、それからなんだっけこれ……そうそう、クロッキー用のデッサン人形(何で床にこれが?)だ。他にも、そういう諸々が散らばっている。

「ベッドで寝てて。もうそろそろお昼だから、おかゆでも作るよ」

キッチンを少し見たところ鍋もあるし、病院の売店で買ったレトルトのおかゆなら作れるだろう

「わかった……」

比奈はそう言って、よちよちと歩きながら寝室へ向かっていく。またタメ口だったな、熱が出るとああなるのかなとか思いながら、僕は冷蔵庫にフルーツゼリーやスポーツドリンクを入れようとした

「……比奈って普段何を食べてるんだ?」

冷蔵庫を見て、大きめの独り言が出た。あまりに食材が少ない。お茶とエナジードリンク、マヨネーズ、ケチャップ、あとは糖分補給用(?)のアメやチョコだけ。

いや、その日の料理に使う量だけ食材を買うようにしている可能性だってある。フードロスや無駄な出費を抑えるためにそういうことを、ああしてないわ三角コーナーがカップ麺のネギとか歯切れの麺とかばっかだしゴミ袋の中はコンビニ弁当のガラばっかりだし。少なくともここ数日はまともに料理をしてないように思える

冷蔵庫の中身とは反比例するように、調味料はかなりの量がある。醤油やみりん、味噌、砂糖、塩、酒、ごま油とかオリーブオイルとか……そういうのはちゃんとある。その近くにはパスタソースもあった

もしかしたら、比奈が原稿にかかりっきりになる時は食生活が荒れるのか? 思えば、コミケ前後(それに限らずイベントがあるとき)は彼女が少しだけキツそうになる。

『自分でやりたいことあってるんだから頑張るっスよ!』

いつだったか、彼女がそういうことを言っていた。これまではその言葉通り、アイドルと同人作家の二足のわらじを履くために、彼女は尽力をしていたし、実際両立出来ていた

けど、今回は違う。寒暖差、年度の切り替わり、レッスンの内容……色々が折り重なって、彼女はああなってしまったんだ。

彼女の体力やスケジュールを十分に把握し切れてなかった、プロデューサーである自分に問題がある

彼女がこんな事にならに用にすること、そして彼女に無理をさせないようキツく言っておかなかった責任もある

「やっぱ……上司じゃないな」

アイドルの道に引きずり込んで、アイドルにさせたのは僕自身だ。だから、彼女がやりたいことの障害になるようなものや、苦しくなることだけは絶対にさせたくなかったのに

何か出来なかったことはないか、と無性に自分に腹が立つ。同時に、これから出来ることを考える。出来なかったことを悔いる時間は、これから出来ることに回すべきだろう

「……おかゆ作るか」

まずは、それがいいだろう。鍋でお湯を沸かし、パウチのままレトルトのおかゆを入れる。お湯が吹きこぼれた。ついでだからそこの油汚れと一緒に拭き取った


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