【シャニマスSS】冬優子「それは」灯織「あったかもしれない邂逅」
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9: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 17:46:15.37 ID:khuu0cd90
 虚像とアイドルと、どんな時も泳ぎ続ける魚。そこに何となく、アスファルトに擬態した水たまりを混ぜ込んだところで、その四つのワードが私に一つの仮説を与えた。

 ……つまり、虚像のアイドルは、虚像のままで泳ぎ続けないといけないと。一度キャラクターを作ってしまえば、寝ても覚めても、そのキャラクターから逃れることはできないと。彼女は、そう言いたいのかもしれない。

 でも、それは……

「あまりにも、辛くないですか?」

 素直に思ったことを口にする。彼女はそれを、きっぱりと否定した。

「慣れているでしょうから、辛くはないと思いますよ。それに……」

 また、彼女が笑う。

「そうしないと生きていけませんから。仕方がないです」

 ……でも、それは、マグロの話のはずだ。

 そう考えてしまったが口には出せない。それを口にしたところで、自分の言いたいことを的確に伝えられる自信がなかった。

 だんだんと、そんな口下手な自分に苛立ちがつのる。その苛立ちを悟られたくなくて、うつむいた。

「……あ……」

 うつむいて、澄んだ水たまりを見とめた。足元の水面に歪んだ自分の顔が映る。昔からよく知るその顔を見て、私にある閃きが宿った。

 彼女の笑顔の意味。彼女の笑顔を前にすると、何も言えなくなる理由。それに気がついて。

 それを理解して。 

 私は、岐路に立っていた。



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