【シャニマスSS】冬優子「それは」灯織「あったかもしれない邂逅」
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8: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 17:45:23.61 ID:khuu0cd90
 絶句した。今度は、言いたいことがあるのに言えない、のではない。正真正銘、私は口にすべき言葉を失っていた。

「その眼鏡、度が入ってませんよね。この距離なら、ふゆでもわかりますよ。ファッションにも見えないので変装用の眼鏡です。メガネさんは高校生だと言っていましたから、変装が必要な高校生となると……」

 彼女は楽しげに言う。もう楽しげに言えている。糾弾するような響きは一切ない。謎解きゲームで遊んでいるかのように、その相手である私を楽しませようと努めていた。

 私は少しだけ見えた彼女の陰りが忘れられなくて、だから、彼女の態度に上手く応えられなくて、なんとか別の言葉を取り繕う。

「……ふゆさんは、アイドルが虚像だったら、どう思うんですか?」

 彼女は二、三度目をパチクリとさせた。それから、ちょうど大手の寿司チェーン店の横を通り過ぎたからか、こう言った。

「マグロさんみたいだな、と思います」

「……マグ、ロ?」

「はい。マグロさんって、寝ている間も食事の間も、どんな時でも泳ぎ続けているそうですよ」

 彼女がピンと人差し指を立てた。私は考える。マグロという比喩の意味を、彼女の言いたいことを。考えて、結び付けようと試みる。



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