【シャニマスSS】冬優子「それは」灯織「あったかもしれない邂逅」
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11: ◆/rHuADhITI[saga]
2019/04/07(日) 17:48:47.76 ID:khuu0cd90
「そんな、大丈夫ですよ。ぜーんぜん痛くありませんから」

 手を二回ほど開閉させてから、やはり彼女は笑みを浮かべた。気がついてしまえば、ぎこちない笑顔。

 それは、やんわりとした、ある種の『拒絶』だ。あらゆるものを拒絶しているわけではない。ただ、自身の本質に立ち入ろうとするものを排除しようとする笑みだった。

 例えば本名。例えば失言。

 そういった拒絶を無意識下に感じ取れていたからこそ、私は何も言うことができなくなってしまっていた。

「そこまで赤くなっていて、痛くないわけがないです」

 言い切る。

 彼女の笑みは、拒絶であると同時に『取り繕い』だ。現に私も意識下で、「笑えているから痛くないのかもしれない」と思い込んでいた。だから、何も言ってあげることができなかった。

「心配しないでください。ふゆ、強い子ですので」

 彼女は依然として笑みを崩さない。胸に軽く手を当てて快活そうな表情を作っている。

 私はそこに、真乃とめぐるを想起した。それは実際のところ、ほとんど逃避のような想起だった。

 真乃とめぐるは感情のままに笑うことができる。あの二人は、誰かを良い方向に変えることのできる、本物の笑顔を持った二人だ。

 だが、目の前の彼女の笑みは二人の物とは全く違う。もう私には、それが作り物にしか思えない。そうとしか見えなくなってしまえば、苦しくなる。だからこそ私は、弱い心ですがるように想起をした。



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