加群「鏡の向こうの」
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11:名無しNIPPER[sage]
2019/04/03(水) 21:17:56.12 ID:pOwoTKMWo




『お疲れ様』

 首輪も付けていないゴールデンレトリバーが、加群を待っていた。
 街中にポツンと一匹。大人に保健所に連れて行かれなければ子供の餌食になりそうなものだが、ここにいるのは彼らだけだ。
 木原脳幹。木原加群に近い領域にいる木原の一人。

『後始末はこちらでやっておこう。教師である君にやらせることではないからな』

「そうか」

 最低限の返答だった。
 会話ではなく、回答。それ以外に混じり気のない返事。
 それだけで、加群は用が済んだとばかりに何処かへと過ぎ去ろうとする。

『まあ待ちたまえスパー』
 
 脳幹が葉巻の煙を吹きかけながら引き留めると、加群は少し嫌そうな顔をしたものの、無言のままに立ち止まる。
 言われた通りにしたというのに、脳幹がどこか複雑な面持ちを見せた意味を、彼は理解しているだろうか。
 


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