【バーナード嬢曰く。】神林しおりの私小説【さわ×しお】
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5: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2019/03/14(木) 22:29:48.22 ID:3gAsdKZp0

 私と町田さわ子がこういう関係になってから、おおよそ二か月が過ぎていた。

 最初は殆ど酩酊の勢いだったと記憶している。夜に私の部屋で酒盛りをしながら本の話をしたり、原作物の映画を見たり、そうしているうちにあいつが私にしなだれかかってきて……。
 徐々に近づいてくる顔の、好奇心旺盛な瞳に見つめられると、私はどうにも身動きが取れなくなる。取れなくなってしまった。だから、耳から頬、頬から口の端と、確かめるように、確認するように近づいてくるその行為を、私はなんの抵抗もなく受け入れてしまったのだ。

 自分が同性愛者だという自覚はなかった。反面、今まで恋い焦がれる異性が現れたという経験もなかった。
 「極道に惚れたのではない。惚れた男が極道だっただけ」という台詞は、家田壮子の原作には出てこず、少し拍子抜けした記憶がある。つまりはそういうことなのかもしれなかったし……、

 町田さわ子をこっそりと盗み見る。興味は本へと戻ってしまったらしい。

 ……「幸福線出帆」の一文にあるように、「これが私たちのオペラ」であるのかもしれなかった。「善も悪もない、自由でひろい世界」。



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