【バーナード嬢曰く。】神林しおりの私小説【さわ×しお】
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1: ◆yufVJNsZ3s[sage]
2019/03/14(木) 22:22:09.45 ID:3gAsdKZp0

「切腹って痛いのかなぁ」

 町田さわ子が真剣な表情で尋ねてきた。いきなり何を言っているんだこいつは、と疑問がよぎるが、彼女が持っている文庫本のタイトルが眼に入って納得する。「幸福号出帆」。三島由紀夫著。
 切腹が痛いかどうかよりも、まず町田さわ子が三島由紀夫の最期についての知識があることが驚きだった。

 いや、と私は思い直す。私たちももう二十歳を超えた大学生だ。流石にそれくらい知っていてもおかしくはない。

「痛いだろ。結局切腹だけじゃ簡単に[ピーーー]ないからこそ、侍なんかは介錯役が必要だったわけだし」

「そっかぁ。そうだよねぇ」

 それだけの感想をぼんやりと述べて、また読書に戻った。

 昔と比べて随分と本を読む姿が堂に入るようなったものだ。そんな、まるで師匠じみたことを考えてしまう。



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