10: ◆dzX3.Do/lI[sage]
2019/02/27(水) 22:45:02.17 ID:aP5KLD6H0
事務所に行ってはPサマとお話して、アイドルの子たちを拝んで。
それでレッスンで打ちのめされて、Pサマに連れられて帰っていく。
研修生時代はそんな毎日。
まだ『アイドル』じゃなかったけど、そんな毎日がぼくにはたまらなかった。
みんなぼくのことかまってくれるし。案外悪くない?なんて思ってた。
11: ◆dzX3.Do/lI[sage]
2019/02/27(水) 22:45:29.31 ID:aP5KLD6H0
レッスンルームには目もくらむようなイケメンがいて、
雑誌やテレビでにしかいないようなカワイイ子がいて、
いつもはステージにいるアイドルたちが目の前にいて、
そんな人たちがビビっちゃうほどおっかない顔してレッスンしてた。
12: ◆dzX3.Do/lI[sage]
2019/02/27(水) 22:46:06.27 ID:aP5KLD6H0
ぼくを見る目は次第に変わっていった。
期待から困惑、困惑から呆れ、呆れから哀れみ。
いつの間にかぼくの耳には、聞きなれた声しか聞こえなくなってた。
これまでとはぜんぜん違う世界にいるはずなのに。
13: ◆dzX3.Do/lI[sage]
2019/02/27(水) 22:46:51.17 ID:aP5KLD6H0
なのにPサマは、いつもぼくのことを見てたよね。
失敗すれば「大丈夫だ、次はできる」そうぼくを励ましてた。
もたもたしてれば「落ち着いて、少しずつやればいい」そうぼくを落ち着かせた。
たまにできれば「よくできたぞ、頑張ったな!」そうぼくを褒めてくれた。
14: ◆dzX3.Do/lI[sage]
2019/02/27(水) 22:47:42.54 ID:aP5KLD6H0
そうしてその日がやってくる。
オーディション。ぼくの、初めてのステージ。
その日のことはよく覚えてるよ。
ぼくの手を握ってPサマ大喜びだったよね。
15: ◆dzX3.Do/lI[sage]
2019/02/27(水) 22:48:36.65 ID:aP5KLD6H0
みんなの前に立つ。みんなの視線に晒される。
今のぼくには恐怖でしかない。
失敗したらどうしよう。出来なかったらどうしよう。
嫌われたらどうしよう。いられなくなったらどうしよう。
16: ◆dzX3.Do/lI[sage]
2019/02/27(水) 22:49:16.41 ID:aP5KLD6H0
オーディションまでは時間がない。当然これまで以上に熱も入る。
やらなきゃ合格できない。合格しなきゃアイドルにはなれない。
そう考えると、身体が全然動かなくなった。
出来たはずのことが出来なくなって、いつもの時間に起きれなくなって、
Pサマの言葉も遠くに聞こえるようになって、周りの視線に敏感になった。
17: ◆dzX3.Do/lI[sage]
2019/02/27(水) 22:49:47.86 ID:aP5KLD6H0
辛い。しんどい。なんでぼくがこんな目に。
もういい。もういいや。もういやだ。
こんな目にあうのはたくさんだ!
18: ◆dzX3.Do/lI[sage]
2019/02/27(水) 22:50:25.45 ID:aP5KLD6H0
これでもうイヤな思いは終わり。
疲れないし、しんどくないし、人の目にやむこともない。
散々迷惑かけて裏切ったんだ。普通の人なら見捨てるに決まってる。
……Pサマを裏切ったことだけは、少し心が痛んだけど。
でももう耐えられない。だからぼくは逃げ出したんだ。
19: ◆dzX3.Do/lI[sage]
2019/02/27(水) 22:51:10.01 ID:aP5KLD6H0
なんで??
なんでこの人は怒らないの?
なんでこの人はぼくを見つけるの?
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