不死講
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30: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/04/07(日) 17:53:19.90 ID:NdD66LHM0


「ふむ……探偵の君に、聞かせるのも少しだけ恥ずかしいが。今の君の状況を、僕なりに推理してみよう」


「ほぅ、聞かせてもらおうかワトソン君。ただ、その前に酒を返してくれ」


シュレの右前脚の肉球から、ウイスキーを奪い返し、いっきに瓶を傾ける。
口内に、甘さと苦みがフィフティフィフティぐらいの割合で広がっていく。おや?ウィスキーってこんな味だったけ。


僕が、疑問符を頭に浮かべていることに一切構わずシュレは語り始める。


「君は、吾輩らこの世界の住人とは違う価値観。人間観を持っているようだが、それは一体どこで形成されたものだろうか」

「君の言う所のこの狂った世界に在りながら、君は如何にしてその『正常な』価値観を手にしたというのか」

「答えは簡単さ。実に残念なことであるが、この狂った世界でたった一人その異常性を訴える君のほうが異常だということさ」

「『狂っている』のは世界ではない、君のほうなのだよ」


まったく、その一人称も相まってか僕よりずっと探偵みたいな喋り方をするやつだ。
これじゃあ、どっちが間抜けなワトソン君かわかったものじゃない。おっと、これはワトソン君に失礼な物言いだな。


「人間の首から上に、人間の頭が据わっているなんてことはないし、猫がみゃあと鳴くことだって常識的にありえない」

「そういえば、君は君自身の『正常』だったころの記憶が曖昧だと言っていたな。君の研究がどのような結果に至ったか思い出せないと」

「ならば、こう考えてみるのはどうだろうか。それは、その記憶が作られたものだからだ」

「君が『正常』だったころの記憶というのは君の『異常』な精神によって妄想されたものなのだ」

「いわゆる夢見た異世界というやつさ」


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