15: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/03/04(月) 23:27:31.59 ID:BQ4P3nWK0
さて、そろそろ本題に戻ろう。
僕は拳をにぎり空を見上げ呟いた。
「犯人め、きっと追いつめてやる!そして必ず結婚指輪氏を取り返して見せる!ただし、その生死は問わない」
そうやって言葉にすることで、僕はこの依頼に関する違和感にふと気づくこととなった。
現場を見るに、結婚指輪氏が攫われたのは間違いない。だが、その生死に関してはどうだろうか。
体があの状況だ、普通の世界であれば死んでいるだろうが残念なことにここは狂った異世界だ。
結婚指輪が頭の役目を果たしていたというのなら、胸から血を流し頭を?がれていたわけだからそれは死ぬ以外にないだろう。
しかし、結婚指輪が収まっていたのは左手の薬指だ。どうして、それで頭の役目を果たせようか。
結婚指輪氏の体の構造はこの異世界においても稀有な例である。少なくとも、僕は今日初めてそういった構造の人間がいることを知った。
ならばだ。どうして、胸から血を流しているだけで彼が死んでいると断定できるのだ。結婚指輪単体で生きている可能性をどうして追わない。
そう、僕が言っているのは依頼人である電卓夫人のことだ。
夫人は、結婚指輪氏の本体?が攫われているにも関わらず彼を既に死者として扱っていた。
探偵の僕の観察眼によると、電卓夫人には医学的見地があるように見受けられなかった。
ならば、なぜ主人の死を確信できていたのか。
簡単だ、夫人が殺したんだ。それ以外考えられるものか。
完璧な推理だ。もうこれ以上、真実に晒すべき謎はないだろう。
……しかし不思議だ。なぜ殺人犯である電卓夫人が遺体の行方を追っているのだろうか。
しかも、第三者である僕なんかにそんな依頼をしたのだろうか。
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