14: ◆CItYBDS.l2[saga]
2019/03/04(月) 23:27:04.56 ID:BQ4P3nWK0
さて、この事件もどうやら終盤に差し迫りつつあった。
犯人は、獣の匂いを纏った何かであろうと僕は推測する。結婚指輪氏の体に残された匂いこそが唯一の手掛かりというわけだ。
いやいや、もちろん他の可能性を全て彼方へ追いやったわけではないぞ。
例えば……そうだな。結婚指輪氏が世間一般の嗜好とはかけ離れら趣味を持っており、獣臭の香水を使っていた可能性は誰にも否定できないはずだ。
寝るときに身にまとうのは獣の臭いがする香水を数滴……そんな奴が居るか?
そういえば、最近の僕は夕方になると少し獣みたいな匂いが漂うことがある。悲しくなるので、それは今は忘れよう。
さて、賢明な諸君なら他の可能性にも辿り着くに違いない。
結婚指輪夫妻が大の動物愛好家で自宅で虎を飼っているだとか。
結婚指輪氏が、最後の食卓にジビエ鍋を食ったとか等々だ。
もし君が、酩酊状態にあるのならきっとこの限りなくゼロに近い可能性にも光をあてるはずだ。
だが、残念なことに上記の可能性はこの世界において絶対にあり得ない断言しよう。
なぜならば、この世界には真面な人間とともに真面な動物もいないからだ。いや、訂正しなくてはならない。
真面な動物どころか、この世界に人間以外の生物は一切存在していない。理由?そんなの僕が知ったことか。
そんなに知りたければ、神にでも聞いてくれ。幸い神なら僕の部屋の隣に住んでいる。
虎はもちろん、ジビエ鍋の材料となり得る猪や鹿だって存在しない。
かつて、僕が愛してやまなかった猫さえいない。誰が何と言おうと、この世界に獣は存在しないのだ。
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