7:名無しNIPPER[saga]
2019/02/20(水) 20:59:33.38 ID:vutjDZzWo
「……部長?」
「すまない、もう少しだけ見せてくれないか」
今のはいったい何だ?
小さく掲載されたその部分をもう一度よく見てみる。
……うむ、小さくてよく分からん。老眼鏡をとってこなければ。
小走りでデスクワーク用の眼鏡を取りに戻り、不可解な現象を見たかのごとく立ち尽くす部下をよそ目にもう一度、その写真をにらんだ。
小さな写真でも分かるような大きな花柄をあしらった白いワンピースは、私から見ても今風のファッションではないのが分かるほどで、しかしそれがたまらなく似合っている。
同じ柄のカチューシャが、ふわりとまいたミディアムヘヤを飾っていた。
こんな女の子がまだいたなんて……?
彼女一人だけがまったく別の時代の写真からこの頁に貼り付けられているかのような、
そんな少し浮いたオーラがインクの集まりであってもよく分かる。
私はその間ずっと、奇妙な動悸に襲われた。
齢五十に迫る今の私には確かにこれは動悸でしかないが、若いころの表現に言い換えるとするならこれは「胸の高鳴り」だ。
私のような老いぼれに片足を突っ込んだくたびれた男が、胸の高鳴りとは背中のかゆくなる思いではあるが。
何が言いたいかというと、こんな衝撃は学生時代、TVで初めて“あの子”を見かけたとき以来だった。
そのたたずまい、服装、髪、丸みのある小さな顔、優しくもキリッとした瞳。
根拠もないままに、その姿は、かつて私が熱狂した伝説のアイドルたちにどこか似ていると思った。
37Res/35.29 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20