4:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:31:12.07 ID:HCYRpEUW0
「プロデューサーは小さい小さいって言うけどさ、杏だって昔から小さかった訳じゃ無いんだよ?」
「ほーん?」
書類に目を通しつつ、杏の言葉に耳を傾けるプロデューサー。
この時、杏の語る言葉が今後の彼の動向を左右することになるとは思いもしていなかった。
「杏さ、3年生くらいまでは女子の中では背の順だと後ろの方だったんだよ」
5:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:32:18.19 ID:HCYRpEUW0
女性の成長期は一般的に15〜16才までとされている。
成長期に入るのが遅かった場合は22才頃まで身長が伸びると言われている。
杏の場合はピークが早かった。と言ってしまえばそれまでだが、しかしそれだけでは説明が付かないと感じるのも事実だ。
「杏、そろそろレッスンの時間だろ?」
「プロデューサー、代わりに受けてきていーよ」
6:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:33:51.41 ID:HCYRpEUW0
退勤後、プロデューサーは同僚でもあるアイドル数名と居酒屋にいた。
日々忙しい彼らに話の種が尽きるという事は無く、今日もその日の出来事を肴に酒をあおっていた。
「そう言えば今日杏と仕事中に話してたんですけど、あいつって子どもの頃からチビッ子って訳じゃ無いんですって」
「あら、そうだったんですね」
プロデューサーの言葉に相づちを打ったのは柳清良。元看護師という経歴を持つキュート部署所属のアイドルだ。
7:名無しNIPPER[sage saga]
2019/02/14(木) 18:35:36.75 ID:HCYRpEUW0
「そうですねぇ。ナナも小柄ですが、流石に小学生の頃に止まったりはしませんでしたよ?」
美世の言葉に続けるのは安部菜々。こちらもキュート部署のアイドル。
自称ウサミン星人の“永遠の17歳”。彼女が飲んでいるのがなんなのかはここでは重要では無いので触れない事にする。
「うーん、言われて見れば確かに早すぎな気もしないでもない、のか?」
「もしかして杏ちゃん、『少女性徴覚醒』が起きていない、とか?」
8:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:36:33.61 ID:HCYRpEUW0
『少女性徴覚醒』、それは恋をすることで身体の成長を促す女性特有の生理現象。それが始まった少女たちは『咲いた』と言われる。
思春期の証明のようなものである。
詳しくは週間ヤングジャンプに連載中の『花待ついばら めぐる春』を読んで頂きたい。
つまり、清良は杏の身体に『少女性徴覚醒』が起きていないが為に小柄なままなのでは無いかと仮定したのだ。
9:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:38:20.72 ID:HCYRpEUW0
「へぇー、女体の神秘ってやつですね」
「保健の教科書に載ってる事ですよ?」
「それを読み込む奴はスケベ扱いを受けるので殆ど読んで無かったですね」
性の扱いというのはデリケートなものである。身近に母や祖母以外の異性がいないとその手の知識は入ってこないものである。
「でもさ、それって杏ちゃんが今まで誰にも恋をしたこと無いって事でしょ? そんな事ってあるのかな?」
10:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:39:17.29 ID:HCYRpEUW0
恋をする相手は教師や親兄弟、画面の向こうの俳優やそれこそアニメのキャラクターでも構わないのだ。更に言えば性別すらも厭わない。
それが起きていないという事は、人を好きになる気持ちが分からないという事を意味する。
「んー、でも杏ですよ? 案外あり得るんじゃないですか?」
「プロデューサー、杏ちゃんをなんだと思ってるんですか!」
余りにも無礼なプロデューサーの言葉に菜々が怒り、それを2人が宥めつつその日の宴は幕を閉じた。
11:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:40:31.73 ID:HCYRpEUW0
翌日、プロデューサーは昨日とは異なり自身のデスクで仕事をこなしていた。
が、その目線は書類やパソコンの画面ではなく度々杏へと向けられていた。
「ねぇプロデューサー。さっきからなんなのさ。落ち着いて昼寝も出来ないよ」
杏はたまらず不満を口にした。チラチラと見られて気分が良くないのは尤もだ。
「あー、そんなに見てたか?」
12:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:41:25.84 ID:HCYRpEUW0
「すまん杏。……ちょっと聞きたい事があるんだが、いいか?」
「何さ、改まって」
普段とはあからさまに態度の違うプロデューサーに怪訝な表情を浮かべる杏。
プロデューサーは杏が寝そべっているソファーの向かいに腰掛け、話を切り出した。
「なぁ杏。『少女性徴覚醒』って知ってるか?」
13:名無しNIPPER[saga]
2019/02/14(木) 18:42:27.82 ID:HCYRpEUW0
「おま、それがどういう意味なのか知ってるのか?」
「もちろん。杏、今まで恋ってしたこと無いんだよねー」
初恋とは人間誰しも通る道である。中には
『ボクは愛など信じないよ』
などと口にする者もいるのだろうが、そんな者だって大抵は物心ついて直ぐに誰かを好きになるものだ。記憶に残っておらずとも。
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