少女は死ぬまで生きるようです
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11:はみがき
2019/02/10(日) 11:52:30.92 ID:eA0evHgOO
『サーチライトに撫でられるまで』最終話前編


私は駆ける。
夕立のなかを、長い黒髪を振り乱し、あの無邪気な死神の名を叫びながら。

流石に息が切れてしまって、脚が震えて言うことを聞かなくなってしまう。日頃の運動不足がたたってしまったようだ。
……だって普通、死神を必死で探すことになるなんて思わないよ。そんなふうに、酸素不足の脳内は文句ばかりを産生していた。

喘鳴を零しながら、道路脇の公園にある水飲み場にふらふらと向かう。蛇口をひねって、細く吹き出す水を顔面にいっぱい浴びる。ぽたぽたと水滴を垂らしながらベンチに倒れ込む。無遠慮に射し込む西陽が鬱陶しくて、目元を腕で覆った。

「百夜……どこにいるのさ……」

「さて…どこだろうね」

「……!!」

思わず飛び起きて、声のする方を振り向いた。

「百夜……びゃくや……なんで…」

「死神協会の本部にちょっとね。怒られに行ってきたよ」

「やっぱり、私なんかと過ごしてるせい…?」

「んー、それもあるけど。……私、ろくに死神やれてないんだ。ノルマとかもあってさー、死んだあとまでこき使われるのも疲れるもんだね」

「死んだ……あと……?」

「あれ、言ってなかったっけ。……死神は、生前自殺した人がなる職業なんだ。自分の命を奪えるなら、他人の命だって奪えるだろ?って感じなのかな」

「百夜に……生前の記憶はあるの?」

「それがぼんやりとしか思い出せないんだ。でもこれだけは覚えてる。死ぬのは、死ぬほど怖かったよ」

「そっか……ねえ、百夜」

「なあに?」

「いまの私なら……殺してくれる…?」

「ああ、殺してあげられるよ」

いつの間にか夕立は止んでいた。雨雲の隙間から薄い茜色の光が、街を照らしていた。

百夜が大鎌を取り出す。
その刃先を私の首筋に当てる。
唇を噛む。ぎゅっ、とかたく目をつむる。
ようやく[ピーーー]るんだ。ようやく。

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