【バンドリ】無題
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9:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:03:09.53 ID:M4jexkrI0



 休日。気付いたら十二月になっていて、気付いたら年の瀬だった。

 家事を済ませ、日用品や食材の買い出しも終わった私は、手持無沙汰にぼんやりとテレビを見ていた。

 家電量販店で投げ売りされていた旧型の液晶テレビ。その22インチの枠の中で、煌びやかなステージライトを浴びて演奏をするガールズバンドが映っていた。画面右上には『新進気鋭のアイドルバンド!』とテロップが打たれている。

 それを見て少しだけ懐かしいな、という気持ちになって、それから居た堪れない気持ちになったからチャンネルを変えた。歪みをかけたギターサウンドが消えて、代わりにニュースキャスターの生真面目な声が部屋に響いた。それに耳を傾ける。

 殺人、強盗、人身事故。年末だというのに暗いニュースが多いんだな、と思ってから、むしろ年が変わる前にみんな色々と清算をしているのかな、と思った。

 暗いニュースが終わると、ニュースキャスターの声が一気に明るいものに変わる。世間の流行の話題になって、さきほどのアイドルバンドがどうとかそんな話をしだした。

 それも今の私にとっては辛気臭いニュースとさほど変わらなかった。結局どこへ行っても目に付くものは目に付いてしまうんだな、という諦観を抱いて、ぼんやりとそのアイドルバンドの特集を聞き流す。

 だけど、ギターの女の子が「パステルパレット」という言葉を口にして、それだけは聞きたくなかったからテレビを消した。それから恐る恐る紺色のギターへ目を向ける。

 ギターは何も変わらず、何も言わず、ただ蛍光灯の明かりを反射させていた。いつものように、何ともないように、あの日から変わらず、ずっと、ただそこにいるだけだった。

 急に息苦しくなったから、私は部屋の窓を開けて、身を切るような冷たい冬の空気を身体いっぱいに吸い込んだ。




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