4:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 00:59:59.48 ID:M4jexkrI0
◆
東北の中でも賑わう都市。その駅から歩いて十分弱の書店。そこが今の私……二十三歳の氷川紗夜が勤めている場所だ。
その書店を出て通りを歩く。小春日和だった日中から空気が冷え込んでいて、十一月の上旬にしては寒い夜だった。フッと吐き出した息は僅かに白く、人と人とが行き交う通りの喧騒の中へすぐに溶けていった。
「生まれ変わり、ね……」
小さく口の中で呟きながら、私は先ほどの男性客の話を頭の中に呼び起こす。
生まれ変わり。輪廻転生。確かにそんなものはただの迷信だろうと思う。人が死んだらどこへ行くのか、なんて考えても答えにはすぐに行きつく。きっと、ただ真っ暗で何も感じない場所に行くだけだ。
それが正しいのか間違っているのかは分からない。死んだあとのことは死んだ人にしか分からないから、真面目に考えたって仕方のないことだ。
しかしそう思ってはいても、人間誰しも死ぬのは怖い。だからこそそういう迷信じみたものが世界には蔓延していて、それに縋って少しでも死への恐怖心を薄めようと試みるんだろう。
だとするならば……と、考えてはいけない方向へ思考がそれかけ、慌てて頭を振った。すれ違った妙齢の女性が怪訝そうな顔をこちらへ向ける。私は小さく咳ばらいをした。
今日の晩御飯は何にしようかしら、と、努めて何でもないことを考えるようにして、通りに店舗を構えるスーパーへ入店する。
店内には有名なJ-POPのインストが流れていた。東北に来てもう三年が過ぎた。ここにやってきた当初、やっぱりどこの県のスーパーにもこういう音楽が付き物なんだな、と変に納得をした思い出があった。
38Res/42.40 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20