23:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:11:44.85 ID:M4jexkrI0
考えても考えても分からなかった。おねーちゃんはもう何も言ってくれない。あたしに笑いかけてくれない。
ひとりの部屋で一向に答えへ辿り着けそうにないことを悩み続けた。そうしていると、おねーちゃんがどうして旅立ってしまったのかは分からないけど、あたし自身がからっぽになったことだけは分かった。
あたしはいつも、おねーちゃんの背中を見て生きていた。おねーちゃんだけを見て人生を歩んできた。
その道しるべが急になくなった。何をすればいいのか分からなくなった。もうギターを弾く理由も何もないし、極端に言えば、生きる理由を全てなくしてしまった。
だから、あたしの残ったからっぽの人生は、おねーちゃんとして生きてみようと思った。氷川日菜の顔をした氷川紗夜として生きてみようと思った。
そうすればもしかしたら、いつの日かおねーちゃんの気持ちが分かるかもしれない。分かったところでもう何もかもが手遅れなんだけど、少なくともあたしはおねーちゃんの気持ちを理解するまでは生きていく義務があるんだと思った。それがおねーちゃんが最期に残してくれた道しるべなんだと思った。
そうと決めてからすぐに、パスパレの印税が入った通帳から全額お金を引き下ろして、そのお金とおねーちゃんのギターと僅かな手荷物を持って、あたしは置手紙だけを残して生まれ故郷を離れた。
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