15:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/16(水) 01:07:19.28 ID:M4jexkrI0
◆
「あなたは……!」
その帰り道だった。地下鉄に乗って最寄りの駅まで出て、閑静な住宅街を歩いている時に、ふいに後ろから声がした。
聞いたことのある声だった。だから私は振り返りたくなかった。無視して、聞こえなかった振りをして、このまま家に帰ろうと思った。
「待って」
だけど声の主は逃がすものかと私の手を取った。振りほどこうと思ったけど、さっきの後遺症が残っているのか身体に力が入らなかった。
ああ、逃げられないのか。結局私はどこへ行っても、私からは逃げられないのか。諦観と自嘲が混ざったため息を吐き出す。卑屈な笑みで顔が歪む。
ならもういいよ。
あたしは、そう思って振り返った。
「……やっぱり」
「やっほー。久しぶりだね、千聖ちゃん」
およそ三年ぶりに顔を合わせた白鷺千聖は、あたしの軽薄な声を聞いて怒ったように眉を歪ませていた。
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