3:名無しNIPPER[sage saga]
2019/01/05(土) 00:26:10.41 ID:5AyZaIPq0
「ただいま」
「おかえり。早かったわね」
帰宅すると、リビングから姉が顔を覗かせた。
「まあ、空いてたしな」
「……あの、お邪魔します」
「なんだ、あなた居たの?」
誰だお前とツッコミたくなるような彼女。
先程までの高圧的な態度はどこへやら。
姉の前だと、借りてきた猫のようになるのだ。
「あ、明けまして、おめでとうございます」
「はい、明けましておめでとう」
おずおずと、姉に新年の挨拶をする彼女。
そんな挨拶、俺はされた覚えがないけどな。
姉は腕を組み、つま先から頭の先まで眺めて。
「ところで、どうしたの、その格好は?」
「えっ? な、何か、おかしいですか?」
今日の彼女の格好はカーキ色のフライトジャケットにダボッとしたジーンズ。いつも通りだ。
髪が短いボーイッシュな彼女に似合っている。
「初詣なんだから着物くらい着たら?」
「いや〜実は着物を持ってなくて……」
「じゃあ、私のを着せてあげるから来なさい」
「ええっ!? そ、そんなの悪いですよ!」
「口答えしない! ちょっとこの子借りるわよ」
「ほどほどにしてやってくれ」
助けを求める視線を向けられても万事休すだ。
こうなったら姉は誰にも止められない。
連行される憐れな彼女を見送って、ムードもヘッタクレもなくなり、俺は一人で自室に篭って、お色直しをひたすら待つこととなった。
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