19: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 19:18:23.10 ID:p8Id/7Jt0
杏(ヤフオクには……ないか。メルカリにもなし。あとは、アマゾンが中古扱ってたかな?)
杏(あ、出品されてる――けど、2万円超えてら。うーん……ん?)
杏「……Kindle版あるじゃん」
20: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 19:18:55.38 ID:p8Id/7Jt0
文香「……頭が固いと、古臭いと言われるかもしれません。ですが私は、どうしても電子データというものに信頼が置けないのです。もちろんそれが紙の本に印刷されたものであれ、液晶画面に表示されたものであれ、たしかに文字として、情報としての価値は変わらないでしょう。しかし紙は少なくとも触れることができます。自ら手放さないかぎりは、いつまででも所有しておくことができます。しかし、データはどうでしょう? 形なきものは、いったい、いつまで存在し続けてくれるのでしょうか? ずっとずっと、それが永遠にあるものと信じて疑わず、何年にも渡って生活を切り詰めて、自由にできるお金の大半を費やし続けた果てに、突然のサービス終了と――」
杏「まって! 黙って!! 黙れ!!!」
21: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 19:19:31.92 ID:p8Id/7Jt0
文香「はっ! す、すみません……」
杏「途中から違う話だったよね! その手の話題はデリケートなんだから気を付けて!」
文香「……つまり私は、紙の本が好きなのです」
22: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 19:20:37.84 ID:p8Id/7Jt0
*
――翌日
23: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 19:21:33.59 ID:p8Id/7Jt0
〜岡崎泰葉編〜
24: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 19:22:34.57 ID:p8Id/7Jt0
「泰葉ちゃんおはよう」
泰葉「おはようございます、いつもお世話になってます」
「こないだの公演、大好評だったね」
25: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 19:23:09.07 ID:p8Id/7Jt0
「あ、岡崎さん。公演観に行ったよ、すごくよかった」
泰葉「本当ですか? 嬉しいです」
「話も面白かったし、やっぱり岡崎さんがよかったね。『岡崎泰葉ここにあり』って感じで」
26: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 19:23:46.81 ID:p8Id/7Jt0
――事務所内通路
泰葉(戻ってくるの遅くなっちゃったな。外、もう暗い)テクテク
27: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 19:25:13.31 ID:p8Id/7Jt0
*****
ヨーコさんたちを見送った私に、三人組の女性が話しかけてきた。
三人はそれぞれ、ショーコ・ワカバ・ホタルと名乗った。オートマトンではない、だけど、人間ともなにかが違う。
28: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 19:25:56.51 ID:p8Id/7Jt0
それからワカバさんは、自分たちは戦時中に開発された人工生命体だと言った。
人間と、ワカバさんとホタルさんは毒性のある植物、ショーコさんは毒キノコを掛け合わせた、触れるだけで人の命を奪うことができる生物兵器だと。
ある施設で研究が進められていたが、実用化される前に戦争が激化し、施設ごと打ち捨てられた。気が付けば地上は焦土と化し、人間たちは地下に逃れていた。
施設を抜け出した彼女たちは有害物質に耐性があり、地上でも生き延びることができて、ずっと、あてもなくさまよっていたらしい。
29: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2019/01/03(木) 19:26:54.59 ID:p8Id/7Jt0
ここの土壌は汚染が強すぎて、植物の生育は難しいだろう。種の数には限りがあるから、まずは少しでも汚染の少ない土地を探さなければならない。
「汚染レベルは以前より下がっているんですね?」
ワカバさんが言った。
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