ダイヤ「たんじょうびの」ちか「やくそく」
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4: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2019/01/01(火) 04:30:39.40 ID:pAwLlUB80

黒澤家は元網元の家系なので、漁協系の挨拶回りが多いのですが……。

内浦地区の雇用全体に対してある程度の力を持っているため、それだけはなく近辺の旅館へ足を向けることも少なくありません。

たまたまその年は、新年最初は旅館への挨拶回りの年でした。

まあ、スケジュールの都合もあるので一概には言えませんが、宿泊施設の密集している地区は黒澤家から余り離れていないので、最初は旅館群に足を向けるというのは合理なのです。

ただ、旅館というのは商売柄なのでしょうか……御持て成しが良くも悪くも丁寧で、挨拶回りに訪れた際に上物のお酒を振舞ってくれることもしばしば。

そんなに長い時間ではないとは言え、酒の席に幼い姉妹が顔を出すのも憚られたのか、お陰様でわたくしたち姉妹には退屈な時間が与えられる。


ルビィ「おねぇちゃん? どこいくの?」

ダイヤ「すこし、おそとに……」


どうせ、すぐには終わらない。それは経験則で知っていた。

当時はよくわかっていなかったけれど、お酒の席は抜け出すのも大変なのだ。


ダイヤ「ルビィもきますか?」

ルビィ「ぅゅ……おそと、さむい……」

ダイヤ「…………」


せっかく誘ったのに、寒さ程度に負けたのは多少ショックでした。

まあしかし、子供なんてそんなもので……それにここで癇癪を起こしたようにルビィに怒りをぶつけても仕方ない。

わたくしは──お姉ちゃんなのだから。


ダイヤ「……それじゃ、ここでおとなしくまっててね」

ルビィ「うん」


ルビィは素直にわたくしの言うことに頷いた。

……悲しいくらい、素直に、わたくしが一人で行くことを、止めてはくれなかった。





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