5: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2019/01/01(火) 04:33:27.75 ID:pAwLlUB80
旅館を出ると、すぐに砂浜がある。
内浦の旅館は海を見渡せる立地が多いので、子供の足で行ける範囲だと自然とここに落ち着く。
幼子の頃から、何度も聞いて育った、波の音のする場所。
コートを着込んでいても、海風が吹いてきて寒い。
ダイヤ「……」
身に染みる寒さと、誰も居ない浜辺に響く波の音が、何故だかすごく物悲しくて、
ダイヤ「…………ぅ……っ……」
わたくしは膝を抱えて、
ダイヤ「……ひっく……っ……ぐす……っ……」
一人で──独りで……泣き出してしまった。
寂しい。
ただ、そんな気持ちが頭の中をぐるぐるとしていた。
……当時はまだ小学校にも上がる前、同年代の友達なんて居なくて、
もし何かあっても、話が出来るのは幼いルビィだけ。
父も母も忙しくて、自分の誕生日を覚えていない。
ルビィも寒いから、そんな理由でわたくしの傍には居てくれなかった。
ダイヤ「……ぅ、ぅぅ……っ……」
──ザザーン。
膝を抱えて、顔を埋めると、もう波の音しか聴こえなかった。
誰の声もしなかった。
わたくしは、独りだ。
ダイヤ「……ぅ、ぐす……っ……」
さめざめと涙を流す。身体はどんどん冷えていくのに、泣いてるせいか鼻の頭の辺りだけツーンとして、頭部だけがぼんやり熱い。
身体で感じる冷気と、頭が感じる熱の温度差さえも、今自分が悲しみの中に独り取り残されてることを助長しているような気さえしてきて、
ダイヤ「……ぅ、……ひっく……っ……」
いくら声を殺しても、涙は止まらないし、寂しいも悲しいもどんどん膨れていくだけだった。
「──どうかしたの?」
ダイヤ「……ぇ」
──ふと、声がして、わたくしは顔をあげた。
「どうしたの?? ないてるの??」
気付けば、目の前で幼い少女──とは言っても、当時はわたくしも幼い少女だったのですが──がしゃがみこんでわたくしの顔を覗き込んでいた。
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