魔王「停戦協定を結びに来た」受付「番号札をとってお待ちください」
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11: ◆yufVJNsZ3s
2018/12/31(月) 22:01:24.15 ID:sCIvJdmA0

 と小首を傾げようとして、思い至ります。そうだ、人間たちは「通貨」とやらを流通させているんだ。完全にあたしは頭から抜け落ちていました。
 兌換のための証書であり記号。あたしの辞書にはない言葉。思わず戸惑ってしまいます。

「あ、その、いま、なくって」

 その答えにおじさんは一気に怪訝な顔をしました。

「はぁ? お嬢ちゃんまさか、金払わずに持ってくつもりじゃないだろうね」

「じゃなくて、その……」

 困ってしまいます。そう言ったものを媒介して商品をやり取りするという感覚は、そもそもあたしの中には根付いていないのです。勿論理屈としては理解できるのですが。

「治癒魔法の魔術符ではだめですか? 四肢の欠損まで止血できる逸品ですけど」

 別に引き返してもよかったのですが、アトレイに「お金とやらがなかったから買えなかった」と申告するのは、なんだか負けたような気になりそうでした。少しだけ往生際悪く取引します。
 そう、取引――信頼に裏打ちされた。

 あぁなんて心地のいい言葉!




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