年越し代行
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7:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 20:29:14.39 ID:JbQZeQhn0
 繰り返しになるが、僕達は歳をとることがない。
 年越し代行を行った職員は、そのまま肉体も精神も一年前の状態にリセットされ、次の年を迎える。
 若い肉体を維持する代わりに、その年の記憶を引き継ぐ事ができないのだ。

 肉体と同様に、精神も負荷を加えれば疲弊し、老いていく。
 一年前の状態に戻されるのは、特殊な勤務内容により疲弊した肉体と精神を回復させるためだという。
 おそらく建前だろうけど、当局の説明はそういうものだった。


 僕達は、次の年の瀬が来るまでの間、当局から与えられた「オモテ」の職業に就く。

 職場の隅でエクセルやパワポを弄るだけの会社。
 寂れた観光地の案内所。
 片田舎のマンションの管理人。

 民間公営関係なく、なるべく肉体的、精神的負担の少ない所へ、脈絡無く一方的に振り分けられる。
 つまり、人間関係の希薄な所へと。


 そして、再度記憶がよみがえり、自分の本来業務を悟るのは年末の一週間前。
 そう――僕にとって、クリスマスはちっともめでたくない。
 決まった時期に国から支給されるそのバッジは、ファンタジーかつ不条理な事実を強制的に思い出させ、腐った業務への従事を命じる赤紙だった。


 精神的な負担が相応に大きいという評価はあったのだろう。
 数ある特殊勤務手当の中でも、この年越し代行による支給額は他とは桁が違っていた。

 それでも、繰り返しになるが、離職率は高かった。
 僕もいつだって辞めたいと思っていたが、踏ん切りがつかないままダラダラと続けてもう十年以上経つ。



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