渋谷凛「オーダーメイド」
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8: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2018/12/24(月) 18:38:36.27 ID:EXqurGBL0



 しばらくして、連れて行かれたのは小さなバーのようなお店だった。

 そして、どうもお店の明かりは、点いていなさそうだ。 

「……やってないみたいだけど」

「そう。今日はね。無理を言って閉めてもらったんだ」

 言って、プロデューサーはポケットから見覚えのない鍵を出す。

 それをお店のドアにさして、がちゃりと回した。

「さ、入って」

「うん」

 誘われるままに、ドアのなかへと踏み出す。

 私のあとにプロデューサーも入ってきたようで、背後でばたんと音が響いた。

「まっくらだね」

「ああ。目、閉じて」

 よくわからなかったけれど、言われたとおりに目を閉じる。

 明かりをつけたのだろうか、ぱちんと音がした。

 そのあとで、手を引かれて真っ直ぐにお店の中を歩いていく。

 さらに数歩ののちに手を離され「ストップ」と声がかかる。

「よし、いいよ」

 いつの間に後ろにまわったのか、背中の方からプロデューサーの声が聞こえた。

 言うとおりにして目を開けると、そこにはちょっとした飾り付けがなされた店内と、机の上に並べられた色とりどりの料理があった。

「メリークリスマス! なんちゃって」

 張り上げられた声に驚きながら振り返る。

 どこから出したのか赤いサンタ帽をかぶったプロデューサーがいた。

「なにそれ」

「何年か前のクリスマスのお仕事で凛がかぶってたやつ」

「ちょっと」

「びっくりした?」

「まぁ、うん、かなり。すごいね、これ」

「でしょ? 朝から頑張った」

「料理もプロデューサーが?」

「そこまでは手が回んなかったから、ここ貸してくれた人にさ、お願いしていろいろと」

「……二人でこの量、食べ切れるかな」

「頑張ろうな」

「死んじゃいそうだよね」

「死ぬときは一緒だ」

「このシチュエーションだとそれ、全然感動的じゃない」



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