勇者「彼は正しく英雄だった」
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423:名無しNIPPER[saga]
2019/02/08(金) 00:07:06.46 ID:zmD8XSUAO

喚き散らし、剣を何度も振り下ろす。

その姿は癇癪を起こす子供のようだった。

焼き付いた恐怖を掻き消すように、塗り潰すかのように、振り払うかのように、ただひたすらに剣を振り下ろす。

剣技など一切なく、力の限り振り回すだけ。刃が血に塗れて斬れなくなっても叩き続ける。

それは、錬金術師の体がぼろ切れのようになっても続いた。

「王は怖れない」

どれだけの間続いたのか、国王は息を切らし、剣を握る手からは血が流れている。

最早、周囲に民がいることなどすっかり忘れ、国王は恐怖の虜になっていた。

「王が、怖れるものか」

だからこそ気付かない。

錬金術師から流れ出た大量の血液が、杖に埋め込まれた赤く輝く宝石へと吸い寄せられていることに。

そして、それと同時に彼方で輝く巨大な光の柱、遺された一粒の光、それが都を見て消えたことなど分かるはずもなかった。



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