勇者「彼は正しく英雄だった」
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356:名無しNIPPER[saga]
2019/01/27(日) 01:55:20.24 ID:8oN8VcFcO

第四話

「ハァッ、ハァッ」

戦場は死に溢れていた。魔術師は今尚も突撃を繰り返し、命を散らし続けている。

恐怖も、戸惑いも、躊躇いもない。軍勢の意思は死に向かっている。

兵士達もその異常性に心を挫かれつつある。無感情に突撃を繰り返す様は、悪夢に違いなかった。

賢者は今や狂ったように魔術を連発し、敵が滅び去ることのみを欲している。

それは勝利の為ではなく、戦を終わらせる為でもなく、この地獄から一刻も早く抜け出す為に藻掻いているようだった。

(酷い、酷過ぎる。この戦には何もない。意志も目的も野望も未来も見えない。ただの殺戮だ)

監視者はその有り様を眺めるしか出来なかった。血止めはしたものの、体は自由に動かない。

霞む目を凝らして辺りを見渡すが、彼女の姿は見当たらない。



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