レイジーレイジーの、クレイジーな絆
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7: ◆FreegeF7ndth[saga]
2018/12/09(日) 13:03:47.64 ID:fZLSzMfRo




それからいくらか経って、外では吐息が白く濁り始めた。

冬の、あるオフの朝。

アタシがシキちゃんちでトロトロと朝寝していると、シキちゃんが珍しくアタシより先に起きて、
プレゼントだと言って銀色の細くて長い――1メートルはゆうに超えてた――鎖をくれた。
ちょっと早いクリスマスプレゼントかな? それにしてもなぜ鎖――

「それはね、こー使うんだ……♪」

シキちゃんは、自分の首に赤紫色のチョーカーを巻いてた。
そしてシキちゃんが後ろ髪をかき分けると、チョーカーのうなじ側に金具がついてるのが見えて、
アタシの持ってた鎖の反対側の端を、カチンと冷たい音をさせてはめた。

それでやっとアタシはプレゼントの意図を察した。

「朝ごはん食べたら、お散歩、行こっか」
「うん……♪」



シキちゃんちは、東京の山の手よりいくぶん西側の一戸建てだ。
そこからアタシたちは、プロダクションのある新宿に向かってみることにした。

アタシもシキちゃんも、厚手のコートにニットの帽子と冬の装い。
アタシはマフラーを巻いたけど、シキちゃんは赤紫色のチョーカーを見せつける。

そこから延びる銀の鎖は、互いの利き手――アタシの左手とシキちゃんの右手――を重ねたところに伸びている。
アタシが常に左側、シキちゃんが常に右側を、手と鎖をつなぎながら歩いてる。
鎖付きのデートだ――といっても、シキちゃんは後ろ髪がもさもさしてるから、そんなに鎖は目立たない。

シキちゃんの最寄り駅の街は静かだった。
カチン、カチンっていう鎖の音がよく響いた。

だけど新宿に行くと、さすがに騒がしい。音が群衆のざわめきに呑まれそう。
アタシは左手を振り回して、わざとカチンカチンと鎖をうならせた。
おかげで鎖もびゅんびゅんしなる。

あちゃー、これじゃ、アタシとシキちゃんが鎖で繋がれてるって、気づいた通行人もいたかなぁ。

でもさ、雑踏の中でひとりぼっちだったら孤独感がより深く感じられるように、
雑踏の中でふたりぼっちだと二人きり感がしんみり感じられて、いいよね?
フンフンフフーン、フンフフー♪



REMEMBER17から、タワーレコードを過ぎて、ぶらぶら歩いていると、
レイバンやらオークリーやらのロゴが大きく並んだ、
黒っぽいレイアウトの――中くらいのビルに、サングラスショップが見えた。

アタシはそれで、

「そうだ、シキちゃんへのお返しに、変装用サングラスをプレゼントしてあげよう♪」

アタシは変装用のメガネをもってたけど、シキちゃんは持ってなくて、
つい思いつきを口に出してしまった。まぁ、シキちゃんも否とは言わなかったし。

サングラス屋さんで傑作だったのは、
シキちゃんがオーダーメイドフレームのために顔と目の位置を図られてる時。

お店の隅っこに、視力とか眼圧とか測るいかめしい機械があって、
アレを使うとなると、(買うわけでもないただの付き添いの)アタシは、シキちゃんから離れざるを得ない。
鎖はどーするの? シキちゃんが一人で持ってるだけ。しかもアタシのほうを向けない。

シキちゃんったら、手持ち無沙汰の鎖を自分の手で握りしめてぷるぷる震えだした。

どうしようかなーと思ったら、店員さんがiPadをもってきて、
『度なしで、顔と目の位置を測るだけならコレでいいですよー』なんて言ってくれたら、
シキちゃん露骨に安堵して、店員さんに妙な視線で見られてた。

アタシはそれが面白かったので、気分が良くて想定より財布の紐を緩めちゃった。




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