一ノ瀬志希「ママの気持ちになるですよ」
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42: ◆GO.FUkF2N6[saga]
2018/12/15(土) 17:27:44.85 ID:kZJKvpHt0
 ……。
 あたしにできることなんて今更なにもない。
 あたしの顏なんて、仁奈ちゃんは見たくもないかもしれない。
 それなのに、あたしはなんで走ってるんだろうか。
 疑問の解は出ない。だけど、あたしの体は勝手にステージに近づいていく。

 途中で見知った顔に呼び止められたけど、いまは無視。
 ごめんねプロデューサー、お説教ならあとで聞くからさ。今は見逃してよ。

「はぁ……はぁ……」

 舞台袖に着くと、奥のほうに小さな人影を見つけた。
 ぎょっとしてあたしを見つめるスタッフをかわしながら、その後ろ姿目指してラストスパート。
 あと10歩。
 5歩。


 くらりと眩暈が襲ってきて足がもつれる。
 倒れるすんでで手をつく。
 むむ、さすがに昨日眠れなかったのはまずかったかな。
 でも、いまここで寝るわけにはいかない。

「し、志希おねーさん?」

 顔をあげると、目を丸くして仁奈ちゃんが固まっていた。
 
 あれ、あたし、なにをするために来たんだっけ。
 だめだ、頭がまわらない。


「市原さん、スタンバイお願いします!」

 スタッフから指示が飛んできた。
 もう、考えてる時間はない。




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