一ノ瀬志希「ママの気持ちになるですよ」
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38: ◆GO.FUkF2N6[sage saga]
2018/12/15(土) 13:46:24.49 ID:kZJKvpHt0
「……」

「だいじょうぶだって。約束を破ったのはママのほうなんだから、仁奈ちゃんはなにも心配しなくていいんだよー」

「……てくだせー」

「ええと、ママの電話番号は──」


「やめてくだせー!!」

 ぴしゃりと空気が固まった。
 仁奈ちゃんはくしゃりと顔を歪ませて、言った。



「志希おねーさんに、仁奈の気持ちなんてわからねーでごぜーますよ!!」


 持っていたスマホが滑り落ちて床に落ちる。
 壊れていたとしてもおかしくないぐらいの、鈍い音がした。


 ──あんたみたいなバケモノに、あたしの気持ちなんてわかるわけないでしょ!


「……ごめん、なさい」

 仁奈ちゃんは体を震わせながら俯いている。
 怒っているんだろうか、泣いているんだろうか。
 どんな顔をしているのか、あたしにはわからなかった。

 ……。
 それからのことはあまり覚えてない。
 ただひとつ、「おやすみなさい」を言いそびれた、それだけが確かな事実だった。




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