33: ◆K3Kbcj/nTY[saga]
2018/08/31(金) 21:40:08.18 ID:fSt5IFCp0
「ほ、本当にそう思う?」
「勿論だ」
短く問うた紅莉栖の言葉に迷いなくうなずく。
発言というものは不思議なもので、最初はどれだけ苦労しても一度喉から外へ通ってしまえば、その後は瓦解したようにすらりと紡ぎ出すことができるものだ。
「……どれくらい?」
特殊すぎる状況のせいか、普段なら絶対に言わないような事を紅莉栖は口にする。
科学者の紅莉栖なら、主観的で、更に定量的でない値など絶対に信用しないだろう。
返せば、それほどまでに今の彼女はただの牧瀬紅莉栖である、ということだ。
しかし、今から言う言葉を俺が言っても良いのだろうか。
変な誤解をされないか?
関係が変わってしまわないか?
慎重に考えてみたものの、どうやっても『言わない』という選択肢は存在しなかった。
「――少なくとも、俺がこれまで見てきた何よりも、だ」
恥ずかしい。
恥ずかしすぎる。
こんな浮ついた言葉、平時なら絶対に言えない。
背けたくなる顔を無理やり固定して紅莉栖の顔を見ると、紅潮しながらもとても穏やかな表情をしていた。
「……ありがとう、嬉しい」
目を細めて笑う。
そう答えて、紅莉栖はその場を動いてラボのソファに座る。
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