まほ「まさか、みほと入れ替わってしまうとはな……」
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15:名無しNIPPER[saga]
2018/08/31(金) 19:17:46.22 ID:33mytLdE0

 妹の戦車道力を再計測する為、まほは右目を細めた。そして、その事実を知る。

まほ「馬鹿な……」

 みほの戦車道力が、物凄い勢いで上昇している。上昇し続けている。

 数値は既に1万を超えていた。なるほど、確かにこれならば手加減した自分の動きに反応もできるだろう。

 だが、不可解。戦車道力とはこのような短期間で上げられるものではない。

 声援を力に変えた? ならば黒森峰は応援団をいくらだって組織する。守るべきものがある故の底力? ならば自分は10連覇を逃しはしなかった。

 不自然な作為を感じたまほは、視界を広げ――その絡繰りの一端に気づいた。

 大洗の他のメンバーの戦車道力が、みほとは逆に下がり続けていることに。

まほ(戦車道力の移動……? 有り得ない)

まほ(確かに体表を移動させて攻防力の調整を行うのは常識だが、それはあくまで自身の戦車道力を、自身の体内で運用しているだけ)

まほ(他人に戦車道力を譲渡するなど、聞いたことが……)

 そこまで思考を紡ぎ、まほはひとつの可能性に思い当たった。

 全国大会での決勝戦。自分の乗るティーガーと、みほの乗るIV号。事前に計測していた戦車道力の差から見ても、勝つのは自分達であったはず。

 だがその予想は覆された。それは何故だったのか。

まほ「そうか。一人だけ、やけに戦車道力が低いと思っていたが」

 まほの視線は、みほではなくその背後――声援を飛ばす大洗メンバーの中のひとり。あんこうチームの通信手、武部沙織に向けられていた。

まほ「彼女のPSか……!」

沙織「なんか急に知らない単語が出てきた……戦車道力もそうだけど……」

 PS――Panzer Skillについて説明する必要はないだろう。戦車道力に並び、戦車道の勝敗を分ける要素のひとつである。

 武部沙織のPSを、西住流としての感覚が捉えていた。

 他者の戦車道力を繋ぎ、集め、束ねる――それが通信手である武部沙織が持つ能力。

まほ「あんこうチームのアキレス腱だと思っていたが……まさか、心臓部だったとはな。戦車道力の低さは、PSに裂かれていたが為、か」

 まほの呟きに、地面に突っ伏していた桃が顔を輝かせた。

桃「じゃ、じゃあ! もしかして私にも何か凄い能力が」

まほ「ない」

桃「うあああああああああああああああああああん!」

 再び大泣きし始めた18歳を無視して、まほは戦車道力を高めつつあるみほに向き直った。

 みほもまた、姉を静かに見つめる。高まり続ける戦車道力は、受けたダメージも癒していた。

みほ「……私は、まだまだお姉ちゃんに敵わない。けれど……知っているでしょう? みんなが一緒に居れば、私は負けない」

まほ「それがお前の戦車道、だったな。分かってる。私は一度、お前に負けたのだから」

 だが、とまほは続けた。

まほ「それだけでは、本気を出した私に対しては決定力に欠ける」

 そう、大洗女子全員の戦車道力を足しても、10万に届くかどうかというところだろう。

 まほの53万には、遠く及ばない。



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