95: ◆pkD6GEA.uY[saga]
2018/08/29(水) 22:30:32.53 ID:YDitP8hM0
燃え尽き合った二人はその熱愛を覚ますべくベンチの前で夕陽を見続ける。
でも今度はもうネタも尽きたので、
話す気力も失せたので、時が無駄に経つのを待つばかり。
この一瞬一瞬が特別で、もう二度とない女性との付き合いに、
悔しいのは分かっているが、その悔しさの気力も出せない。
時刻を見ればもう5時40分。あれだけ長い時間は、今はもうない。
でも当初と違い二人で無言の日々を過ごす時間に恐怖心も感じない。
勇太「......」
丹生谷「......」
勇太「......」
丹生谷「......」
勇太「......」
丹生谷「......」
勇太「......」
丹生谷「......」
勇太「......」
丹生谷「......」
勇太「......」
丹生谷「......」
勇太「......」
丹生谷「飽きちゃった…..」
勇太「......」
丹生谷「......」
勇太「......」
丹生谷「......」
勇太「......」
......!
勇太「森夏姫!!!僕と手を握っていただけませんか?」
その言葉を聞いて、俺はまるで紳士のように地面に膝をつけ、最大の敬礼をするように深く跪き、
清潔な白い手袋をしているような手を差し伸べて、驚いた顔つきの丹生谷の前に、自分の仮の姿を見せた。
俺は不意に体が動いたのだ。
丹生谷のためにしてやれることを、もはや世界が狂ってもいい。
笑われてもいい。彼女のために、自分ですら制御不能な本能が、闇の炎を世界中に分散させる。
このまま帰したら、丹生谷も何か納得しないと思う。
感謝と愛の気持ちを表現した、理想と妄想が現実すらも覆った奇妙な世界がこの世に現出する。
この世界に常識はない。もう、丹生谷の心のためにある。
勇太「私は地球でも一人しかない甘美なお姫様に最高級のパートナーを要請されて飛んできた別の国の王子です。
お姫様、どうか私を受け入れる矜持を持ちなされば、どのような願いでも一つ叶え差し上げましょう」
丹生谷「えっ......。富樫君?」
勇太「森夏姫!どうかこの世の王子様にさせてください!」
丹生谷「え....../// あの、じゃあ、いい?」
勇太「はい」
丹生谷「私はもうすぐ17歳で、あと1年で大人になるの。
でもそれと同時に付き合っている人の恋さえも魔法で奪っていくような愛のないシンサマーと名乗る醜い人にもうすぐ私は変わってしまう。
今日しか、チャンスがないの。
お願い、助けて。
私、魔女にはなりたくない......」
ギュッ
勇太「分かりました。私が助けましょう」
勇太「さ、こちらへ。手を貸して。私が貴方をご案内しましょう」
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