86: ◆pkD6GEA.uY[saga]
2018/08/29(水) 22:05:56.43 ID:YDitP8hM0
暫くして話が終わり頬の火照った俺達は夕日とその光に照らされるキラキラ輝く巨大な川を、
ベンチに座ってただ静かに手を繋がずぼーっと見ている。
あれだけ長く青空を白く飾っていた太陽も、西日に落ちかけ、
しかも光の力も弱くなり世界を黄金とオレンジ色に染めている。
夏の暑さはふだんうっとおしいけれど、なんだか見守られているような、勇気をくれているような、
ずっと見た何かに見慣れた色をしていて飽きず、その温かさに護られているような気がする。
やがては太陽は落ち、夜になり、そして明日が来る。
俺が例え死んでもずっと太陽は登る。ずっと同じように。
丹生谷「ねえ、」
勇太「ん?」
丹生谷「富樫君に出会えてよかった」
勇太「なんだよ///」
丹生谷「素直すぎるのよ/// なんかね、のんびりしていられる」
勇太「そりゃよかった」
丹生谷「ねえ、富樫君はこんなこと思ったことがある?」
勇太「ん?」
丹生谷「思えば昔は、大きくなったらこの世界の限りを知り尽くせるんだーって、
もっと楽しいことあるんだって思ってた」
勇太「うん」
丹生谷「高校生になったら、登校中イケメンとぶつかった後学校行ったらその人だった。
その人と運命の出会いを遂げて、靴箱を開けたらラブデターがあったり、最後結婚式で結ばれる。
なんてことないのにね。
今でもそうじゃないかって、転校生が来る話題を見て思うのよ。靴箱を開くたび虚しい気持ちになる」
勇太「うん」
丹生谷「あ〜あ。小学校は楽しかったな。
授業中友達と笑い合いながら明日授業があることを期待してね、
放課後フラフープをしておにごっこではしゃいだ。
算数のドリルを両親に恥ずかしくもなく堂々と褒めてもらった。
その後、皆と一緒に食卓について今日の学校のことを誰誰が何かしたことをいちいち報告して喜んで。
そういう日がいつまでも続くと思ってた」
勇太「うん」
丹生谷「でも現実は親に褒められることもなくなったし、そもそも接点もなくなった。
それでもまだ若いんだからダメと言われるとムキになって早く家を出て大人になりたい」
勇太「うん」
丹生谷「だから友達に逃げたけど、○○がいいよね〜とか、あれかわいいよね〜とか、
それを否定すれば白い目で見られるのわかってるから偽善の笑顔振りまいて。
嬉しくもないのにうんうんって。遅れて教室入ったときの白い目が怖いみたいな。
いつの間にか人に頷かないと死ぬって暗い顔をしていた」
勇太「うん」
丹生谷「友達にひそひそ話されたくなかった。
それで経験不足な私の学力の分野ではうまくいきたいと思ったら大人にダメだしされた。
だから責任取ったらかっこいいと思っている。
何かがしたいからじゃなくて、なんとなく上に立てれば自由になる気がする。
これは中二病じゃないでしょ?」
勇太「うん」
丹生谷「どこもかしこもどこか閉鎖的で。夢を見た世界は実は地獄で。
私が学校にいるから皆を助けようと思ったけど委員長の代わりはいくらでもいる。
落ちたら好きでやってた自業自得だった。
皆が完璧超人に愚痴でさえも見えるのに、他の人でも成立する役割に自信も希望も湧いてこない。
私の代わりなんていくらでもいる」
勇太「うん」
丹生谷「大人になっても、人は生きるためではなくお金のために働いて。
意味のないことの当てのない旅。
たいしてもやりたいことはないし、やりたいことは他人がうまい。
家族に仕事についてない人がいると思われるのを恐れる就活の始まりが怖いの」
勇太「うん」
丹生谷「ねえ、夢を描かなかったら幸せなんでしょうかね。ただ喋りたい。人を助けたいだけなのに。
私が彼氏とデートした、だから褒めてよ。って自慢されて嬉しくないのに、私はお面をかぶって笑うことしかできない。
クラスの委員長も仕事も代わりはいくらでもなりたつ。私の入る場所がない。
今もつまらない勉強して、将来も生きるためではなく、金を稼ぐために生きて、そして死ぬ。
それに何の意味があるのでしょうね。
周囲の目を気にしてお面を被っても、報われなきゃ全然楽しくない。
勉強だって役に立つ機会もなければなにも意味はない。
でも他人の目をうかがわなきゃ生きていけない。
でもそのまま死んだら、何のために宿題済ませて生きてきたんでしょうね?
私は何がしたくて生きてるかわかんなくなっちゃった」
勇太「......」
丹生谷「いつの間にか、
彼氏がいることがまずステータスになって、持ったことがないのが異常扱いされる。
確かにそうだけど、何かが足りない」
勇太「......」
丹生谷「私ね。いっぱい持ってるの。
金も、友達も、成績もある。顔もいい、ルックスもいい。幸せなはずなのに」
勇太「......」
丹生谷「幸せに感じない。こんなの全然幸せじゃない」
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