12:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/26(日) 00:50:07.25 ID:BsXQ9LjA0
自宅に帰ったあと、また自分の部屋に寝転がった。実家ではどうもだらけてしまう。ガラス戸越しでも聞こえるくらいうるさいセミの声。上京する前には当たり前だった夏の日々だ。
古い木の柔らかい香りがすることにふと気づいた。隣に置いていた浴衣に箪笥の匂いが染みついていたようだ。
なんとなく、ちゃんと着てみたくなった。
今まで着ていた洋服を脱いで、袖を通す。素肌に直に生地が触れて、その柔らかさがより強く実感できた。軽くて、着心地がとてもいい。
帯はどう締めたらいいんだろう。紗枝ちゃんがいつも着ているからそれを再現したいけど……。
そうは言ってもうまく締められない。悪戦苦闘しているとだんだん浴衣そのものが脱げてきた。その上、廊下から足音が聞こえてくる。はだけた状態で、たとえ母の前でも恥ずかしいから、部屋に来ないでほしい、と願った。
その思いもむなしく、部屋の扉はガチャリと開けられる。
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