2:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/23(木) 12:23:58.37 ID:vHau6oIW0
プロデューサーさんから連絡を貰ったのは一時間前。約束の時間に、私はプロデューサーさんのいる部屋へとやって来た。
プロデューサーさんは満面の笑みを浮かべていた。
「肇! 仕事だ! 仕事がきたぞ!!」
「えっ? あ、はい!」
プロデューサーさんは仕事がくる度こんな風に大喜びしてくれる。私ももちろん仕事がきてくれるのは嬉しい。でも、それ以上に私のことで喜んでくれるプロデューサーさんのことも嬉しい。
「どんなお仕事ですか?」
「あ、ああ。そうだったな。座ってくれ」
プロデューサーさんから聞いた話はこうだった。
どうやらアイドル特集をとあるテレビ局が行うらしく、その企画の一員としての仕事だそうだ。企画は『苦手なものを克服!』というものだそう。
「肇は苦手なものってなんなんだ?」
「苦手なもの……ですか」
頭を巡らす。
不得意なことなど数えきれない程あるだろうけど、克服しなければならないと考えると当然絞らなければいけない。
「もし嫌だったなら断って構わないぞ」
「い、いえ。やらせて下さい」
アイドルになって早一年。
せっかくもらい始めた仕事を無下にするわけにはいかない。
三分程思考し、一つ思いつくことができた。
「絵、ですかね」
「絵?」
「はい。私は絵を描くことが苦手です。克服できるなら、是非」
「へぇー、意外だな。肇は何でも器用にこなすと思っていたが」
プロデューサーさんは本当に不思議そうな顔をする。そんなこと、ないのに。
「よしわかった。苦手な絵描きを克服だな。頑張れよ!」
「はい!」
こうして私の仕事が決まった。
その後企画会議が進められ、私の苦手克服の具体的な方針が決まった。
期間は二日間。絵の先生がつき、合格とされれば克服したと見なすという。
二日間の内に克服ができなければほとんどカットされてしまう。プロデューサーさんはこの方針に反対していたが、どうやら納得しなければならないようだ。
私はこの条件を呑んだ。せっかくのお仕事だから。何より、真面目に取り組むことは私の得意なことなのだから。きっと克服できるはず。
先生役として選ばれたのは荒木さんだった。
選ばれた理由として、そもそもの絵の実力、そしてアイドル特集という番組の方針から、一人でもアイドルが出た方が盛り上がるからだそうだ。
荒木さんはできれば絵、というより漫画を書いていることはファンには秘密にしたいと言っていたけど、肇ちゃんのためならと企画に参加してくれることとなった。
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