11:名無しNIPPER[sage saga]
2018/08/24(金) 09:48:22.68 ID:8pRhN5eX0
懐かしい匂いがする。
やっぱりその元に、おじいちゃんはいた。
「ただいま」
そんな声に少しだけ体を止めたけど、また動き出した。おかえりの言葉もなく、顔を見てくれない。
「どうした?」
丸まった背と、少し枯れたような声を聞いて、私は答えた。
「挑戦しにきたの」
「……変われたのか」
「わからない。けど、これから変わるの」
完璧じゃなくたっていい。未熟なままでいい。
一歩一歩、前進していけば、それでいいんだと思う。
おじいちゃんはそっと立って、ろくろの前へと私を促した。
私はろくろの前に座る。
指も手も腕も、動いてる。初めて触ったときの感覚を思い出しながら、そっと形作っていく。
「おじいちゃん。私ね」
「うん?」
「いつからかおじいちゃんに認めてもらうために作ってたんだ。でも、私は間違ってた」
「じゃあどうするんだ?」
「認めてもらうものを作るんじゃない。私なりのものを、認めてもらうの」
真似事なんかじゃなく。
私なりの色。私なりの表現で。
辛くても苦しくても、喜びや楽しさを忘れずに。
「そしておじいちゃんをいつか抜かしてみせる」
憧れにだって、届いてみせるんだ。
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