98:名無しNIPPER
2018/08/12(日) 01:23:55.36 ID:w6V3e5/y0
「彼の奥さんとの。もう一度、プロデュースしている姿が見たいって。そして貴方が育てたアイドルが、輝いてる姿を見せてほしいって。この約束をしたとき……もう助からないって、本人も分かってたと思います」
「じゃあ、なんでそんな約束を……?」
「彼に前を向いていて欲しかったんです。彼女にとって、彼が一番輝いていた瞬間が、プロデューサーをやっているときで……」
「でも……」と、ちひろさんは顔を俯けた。
「結局、彼は去ってしまって……ごめんなさい。ほたるちゃんにも迷惑をかけることになってしまって」
「迷惑なんて、そんなことなかったです。私は……あの人にプロデュースしてもらって、本当に良かったと思ってます」
「……優しいんですね、ほたるちゃんは」
「違います。優しかったのは、あの人です」
ただ、それを上手く表現できなくなっていただけなのだ。
ボロボロで、それでも私の傍に、出来るだけ居ようとしてくれた。
そうしてくれたのは、彼がとても優しかったから。
「……ありがとうね、ほたるちゃん。貴方が彼のアイドルで居てくれて……本当に、本当にありがとう」
ちひろさんは私に背を向けたまま、呟いた。それから口元を少し抑えて、大きく、肩で息をしてから、振り返った。
「さあ、早く運んじゃいましょう。お礼にジュース、奢ってあげますから」
微笑んだちひろさんは、ネットで見つけたかつてのアイドルに、少しだけ似ているようだった。
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