白菊ほたる「恨みます、プロデューサーさん」
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91:名無しNIPPER
2018/08/12(日) 01:11:26.11 ID:w6V3e5/y0



 それから、プロデューサーさんは一見、前と変わらず仕事を続けていた。


 ただし、机に小さな変化が起きていた。


 ある日プロデューサーさんの元へ行くと、机の上になにか乗っているのに気付いた。

 写真立てが二つ。私の方から、どんな写真家は見えなかったけど。



「妻と娘だよ」


 プロデューサーさんは言うと、写真を私に見えるようにひっくり返した。

 写真立ては二つあり、片方が二十代ほどの女性の写真。

 それはいつかネットで見た女の人だった。ネットの写真より柔らかくて、幸せそうな笑顔を浮かべていた。


 Tシャツには、有名なアニメがプリントしてあった。

 人魚姫を題材にしたアニメだった。



 もう一つの写真は、小さな女の子。

 まだ小学生にも満たないであろう、小さな女の子。私は思わずほころんでしまった。
 彼女が着ていたのは、私も小さい頃に観ていたテレビ番組、その番組でアイドルが着ていた衣装だった。

 体を大きく伸ばし、今にも踊りだしそうな写真だった。



「私もこの番組、観てました」

「そうか……娘のお気に入りだったんだ」



 彼は写真を持ちあげると、遠慮がちに微笑んだ。



 優しく慈愛に満ちた、暖かな笑みだった。








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