77:名無しNIPPER
2018/08/12(日) 00:53:31.20 ID:w6V3e5/y0
残された子供と共に、彼は知り合いのつてを頼りに海の見える町に引っ越した。
そこで小さな会社の事務の仕事を見つけ静かに暮らしていたが。
関ちゃんプロデューサーは言葉を止めた。苦々しい表情を顔に浮かべながら。
「事故があったんだ。娘さんが海に落ちたんだ」
自販機で飲み物を買うために、目を離した隙だったという。
気づいた時には、彼女の姿は無くなっていた。
遺体は見つからなかった。
まるで泡となって、世界から消えてしまったみたいに。
それ以来、彼はめっきり変わってしまった。仕事も辞めて家に引きこもった状態が続き。
日雇いの仕事をしながら、酒に溺れる日々だったと言う。
「それに見かねた……親類がね。うちの部長に頼んだんだ。また雇ってくれないかって。部長もあいつのことは気にかけていたし。あいつ自身、何度か拒否したらしいが、説得されてね。結局仕事に復帰することになった」
私は話してくれたことにお礼を言った。
「いや、いいんだよ」
帰りの電車のなかで、私はスマホで聞かされた名前を検索した。
いくつかの記事やサイトがヒットして、一番上のサイトを開いた。
引退を知らせる、本当に小さな記事。病気のことはどこにも書かれていなかった。
きっと隠していたのだろう。画像に映ったその顔にどこか見覚えがあるように思えて、でも誰かは思い出せなかった。
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