64:名無しNIPPER
2018/08/12(日) 00:36:06.61 ID:w6V3e5/y0
「お疲れ様です、岡崎さん」
「固くならなくていいですよ。泰葉って呼んでください。私もほたるちゃんって呼ぶから」
「じゃあ……泰葉ちゃん」
「ほたるちゃんは確か――」
そうして、泰葉ちゃんはプロデューサーの名前を口にした。
「プロデューサーさんのこと、知ってるんですか?」
「ええ、昔少しお世話になったことがあって。復帰したって知った時は、正直おどろきましたけど」
「復帰って……?」
「彼は一度、業界から身を引いてたんですよ」
そんなこと、私は全然知らなかった。泰葉ちゃんが、目を細めた。その表情は、どこか寂しげだった。
「仕方がないとはいえ、すっかり雰囲気が変わってて、一瞬分からなかったです」
「前は違ったんですか?」
「はい。明るくておしゃべりで。変わってないのは真面目なところだけ……ほたるちゃん?」
私は呆然としていた。泰葉ちゃんから聞いた言葉が、余りに今のプロデューサーさんと重ならなくて。
「全然……想像つかないです……そんなプロデューサーさん」
驚いている私に、泰葉ちゃんもびっくりしているようだった。
「どうして……変わっちゃったんでしょうか……」
「どうしてって、ほたるちゃん、聞かされていないんですか?」
「? なにをですか」
私の知らないプロデューサーさんの話を、泰葉ちゃんは知っているようだった。
「それは――」
泰葉ちゃんが私の背後に目を向けると、その表情が強張る。
「ほたる」
本人は無意識だったかもしれない。
でも、それは余りに強張った声だった。
振り返ると、プロデューサーさんが立っていた。
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