61:名無しNIPPER
2018/08/12(日) 00:30:28.53 ID:w6V3e5/y0
「プロデューサーさんは海、お嫌いなんですか」
「ああ」
びっくりした。プロデューサーさんがそこまで好き嫌いをはっきり言うのは初めてだったから。
「どうして嫌いなんですか」
「……」
返ってきたのは沈黙だった。答える気はないらしい。
やっぱり、普段より不機嫌だ。このイベントに出ると決まってから、ずっと。
それほど海が嫌いだというのか。
会場に着くと、すでにたくさんのスタッフさんやアイドルの皆さん。裕美ちゃんと千鶴ちゃんも居た。
リハーサルまで余裕があった。
「ねえ、少し探検してみない?」
裕美ちゃんの言葉を、私が否定する理由はなかった。
「プロデューサーさん、少し会場の周りを見てきていいですか……」
「海の方には行くんじゃないぞ。リハーサル前なんだから」
どうしてリハーサル前なら駄目なのか、不満よりも不思議だった。
元よりそこまで遠くに行く気もなかった。
建物の中を見て回ったり、他のアイドルの子と話をして時間を過ごした、関ちゃんプロデューサーにちひろさんもいて。
スタッフさんにご迷惑を掛けちゃ駄目ですよ、なんてちひろさんに窘められもした。
「このホールってね、事務所が小さい頃からお世話になってたから、そのお礼も兼ねて毎年ライブとかやってるんだって」
プロデューサーから聞いたの、と裕美ちゃん。
私たちは三人で客席に座りながら、準備に勤しむ人たちを見学していた。
「そういうの、いいですよね。情を大事にしてる感じがして」
千鶴ちゃんが感心するように言った。
私は頷いてから、座席から周囲を見渡した。小さな胸の高まりに少し興奮もしていた。
舞台に立つ前に、自分たちがどうみえるのか。
そんなとき、端の方にプロデューサーの姿を見つけた。
116Res/145.93 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20