56:名無しNIPPER
2018/08/12(日) 00:17:15.81 ID:w6V3e5/y0
会場はある建物の地下にある小さなイベントスペースだった。
すでに準備は進んでおり、スタッフさんたちが回線などを設置していた。
控室に入ると、緊張した様子で椅子に座っていた裕美ちゃんの顔がパッと明らんだ。
「ほたるちゃん! 待ってたよ」
「今日はありがとうね。裕美ちゃん」
「うんうん。ほたるちゃんが引き受けてくれて、私もホッとしてる。やっぱり緊張しちゃって。ほたるちゃんが一緒だったら、私も頑張れるよ」
控室には別に奥の扉があって、そちらが開いて関ちゃんプロデューサーが顔を覗かせた。
「ほたるちゃん、急だったけど、ありがとう」
それから、関ちゃんプロデューサーは、私の背後――プロデューサーさんに目を向けた。
「よろしくね」
「ああ、ほたるを頼む」
「それはこっちのセリフ。時間がないから、早く打ち合わせだ」
渡された台本を手に、流れを予習する。ミニライブのようなものもあって、その間、私は脇から裕美ちゃんを見る形になる。
「プロデューサーさん」
そのリハーサル中、私は脇に立っていたプロデューサーさんに、舞台に目をむけたまま話しかけた。
たとえまだリハーサルでも、リハーサルだからこそ、キラキラと輝くために努力している裕美ちゃんから、目が離せなくて。
「私も、あの舞台に立ちたいです」
「……ああ、そうだな」
プロデューサーさんの返事は、やっぱり素気ない。
夢なんか語らないけど、それでいんだと思う。
今の私達にとっては。
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