53:名無しNIPPER
2018/08/12(日) 00:14:02.80 ID:w6V3e5/y0
ただ、その希望にいろんな不幸がぶら下がって、今ではすっかり弱まっていた。
嵐の中の蝋燭の小さな灯。
前に進もうとすれば、あっという間に消えてしまいそうな弱い灯。
歩かずに、じっと嵐が止むのを待っているのが正しいように思えて。
裕美ちゃんやプロデューサーさんたちにも、たくさん迷惑をかけてしまうかもしれない。
行動した結果、希望という灯がいとも簡単に消えてしまうかもしれない。
それでも私は、前に進みたかった。暗闇の向こうに煌めいた、僅かな輝きへ向かって。
弱々しい灯が、世界を照らす暖かな光になる可能性に、賭けたかった。
プロデューサーさんが戻ってきた。その表情は、数分の間にすっかり疲れ果ててしまったようにも見えた。
「プロデューサーさん、私」
「ああ、分かってる」
「私、イベントに立ちたいです」
「ああわかっ――なんだって?」
プロデューサーさんは驚いたように目を見開いた。
「迷惑をかけるかもしれませんけど、このチャンスを……逃したくないんです。だから」
このチャンスをつかむことが、どうなるかわからない。ただ、掴まなければ、私は一生後悔して。
テレビの前で、アイドルを羨むだけの、あの頃の自分に戻ってしまう。
それだけは嫌だった。
プロデューサーの言うとおりだ。自分で決めなければ意味がない。
あの時も最初の一歩は私が踏み出した。
だから今も、私が自分で踏み出さなければ。
「私、イベントに出演します」
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