48:名無しNIPPER
2018/08/12(日) 00:03:35.45 ID:w6V3e5/y0
その時の私は、藁にもすがりたい気持ちもあった。
だから、もしかしたら、なにか仕事が見つかるんじゃないか。
でも、当然そううまくはいかなくて。次に会ったとき、裕美ちゃんは言っていた。
「検討はしたいって言ってたけど」
裕美ちゃんの表情から、難しそうなのは十分に伝わってきた。
私はありがとうと答え、その件はそれで終わりになるはずだった。
ところがそうはならなかった。ならなかったのだ。
日曜日だった。学校もお休み。怪我のせいでレッスンもお休みとなっていたので、気が緩んでいたんだと思う。
目が覚めたのは、すっかり日が上りきった後だった。重い体で時間を見て、思ったより寝過ぎたことに驚いて、
そこでスマホが鳴った。誰からだろう。確認するとプロデューサーさんの文字。
私は驚いてから、頭を必死に動かした。今日は確かにお休みだったはずだけど。
慌てて私は電話に出た。
「おはようございます、プロデューサーさん」
「ああ、おはよう」
電話の向こうのプロデューサーさんの声は、少しかすれているようにも聞こえた。
「どうしたんですか、こんな時間に」
「足の方はどうだ?」
「足ですか? 歩くぐらいなら問題ないですけど」
そのことは、金曜日の夜に連絡していた。どうして改めてそんなことを聞くのか。
プロデューサーの目的は、それを聞くことではなかった。
「ほたる、急なんだが、今日は空いてるか」
「どうかしたんですか」
「仕事の話だ」
眠っていた頭が、はっきりと目覚めた。
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