4:名無しNIPPER
2018/08/11(土) 22:52:14.43 ID:S8sM1lda0
前までいた事務所が、倒産してしまったから。
それは初めてじゃなかった。その前も、その前の前も、私が入っていた事務所は倒産していた。
彼女はとてもいい子で、少し言い過ぎるところがあっても、私には優しかった。
持ち前の明るさで、この小さい会社を大きくするんだって、やる気にあふれていて。
ほたるちゃんなんかの不幸に負けないと息巻いていて。
倒産の話を聞いた時、私は彼女と一緒だった。
『あたしは結局、ほたるちゃんに負けちゃったってことか』
開き直ったみたいに彼女は呟いた。申し訳なくて、何度も謝って。
彼女がこの先どうするか、私は知らなかった。知るのが怖かった。
他人を不幸に巻き込んでいるのに、私は新しい事務所に行こうとしている。
断ろうとも考えた。これ以上、誰かに迷惑をかけることになるなら。でも、
『大丈夫、君は素晴らしいアイドルになれるよ』
力強く声を掛けてくれた、あのプロデューサーさんを信じて。
もう一度、私は事務所の扉をくぐろうと思った。
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