白菊ほたる「恨みます、プロデューサーさん」
1- 20
3:名無しNIPPER
2018/08/11(土) 22:51:07.80 ID:S8sM1lda0

―――
――

 私は予定より一時間早く家を出て、予定より一時間遅く目的地の駅に着いた。

 乗っていた電車が事故とか車両不良、いろんなことが起こってしまって、結局のこの時間。


(大丈夫、まだ大丈夫)


 予定はあくまで私の予定だった。約束の時間には、ギリギリ間に合う。

 大勢の人を吐き出す駅から、私も飛び出した。


「ごめんなさい……通してください。ごめんなさい……」


 怪訝そうな人の間を、何度かぶつかりながら通り抜け、歩道橋を上がっていった。目指す先はあと少し。

 新しい事務所。

 今日は、私が初めて事務所に顔を出す日だった。

 本当に突然のことだった。昨日の夕方、見知らぬ男の人から声を掛けられて、うちの事務所に来ないかと誘われたのだ。

 むこうは私のことを知っていたらしい。いつかの現場で一緒だったらしくて。

 私の事務所になにが起こったかも、知っていた。



『凄いね。ほたるちゃん。うちで潰したの何個目だっけ?』



 屈託のない笑顔。良い子だけどちょっと無邪気で、でもあの時は確かな邪気があった。


(なんでこんな時に思い出しちゃうんだろう)


 こんな時だからだ、きっと。




 私は新しい事務所に入ることになった。







<<前のレス[*]次のレス[#]>>
116Res/145.93 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice