3:名無しNIPPER
2018/08/11(土) 22:51:07.80 ID:S8sM1lda0
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私は予定より一時間早く家を出て、予定より一時間遅く目的地の駅に着いた。
乗っていた電車が事故とか車両不良、いろんなことが起こってしまって、結局のこの時間。
(大丈夫、まだ大丈夫)
予定はあくまで私の予定だった。約束の時間には、ギリギリ間に合う。
大勢の人を吐き出す駅から、私も飛び出した。
「ごめんなさい……通してください。ごめんなさい……」
怪訝そうな人の間を、何度かぶつかりながら通り抜け、歩道橋を上がっていった。目指す先はあと少し。
新しい事務所。
今日は、私が初めて事務所に顔を出す日だった。
本当に突然のことだった。昨日の夕方、見知らぬ男の人から声を掛けられて、うちの事務所に来ないかと誘われたのだ。
むこうは私のことを知っていたらしい。いつかの現場で一緒だったらしくて。
私の事務所になにが起こったかも、知っていた。
『凄いね。ほたるちゃん。うちで潰したの何個目だっけ?』
屈託のない笑顔。良い子だけどちょっと無邪気で、でもあの時は確かな邪気があった。
(なんでこんな時に思い出しちゃうんだろう)
こんな時だからだ、きっと。
私は新しい事務所に入ることになった。
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